銀のスケート

お薦めの本

今回ご案内する本も「季刊 子どもと本」でお薦めされていたために初めて手に取った本です。

本当に引き込まれる本でした。

堤防の事故のために、10年もの長い間正気を失った状態の父親。消えたお金の謎、赤貧水を洗うがごとき生活の中で母をよく助け、お互いにいたわり合う健気な兄妹ハンスとグレーテル。

先が気になって、どんどん読み進めたくなるストーリーです。毎晩「ここまで」と言うたびに「あともう少しだけ読んで!」と息子にせがまれてしまいました。

国土の1/ 3以上が海抜下にあるオランダの、水との戦いの歴史や様々な風習を紹介しつつ、話は進みます。

子ども達がスケートで旅をする場面は、特に観光名所や歴史スポットを紹介していくのですが、オランダ紹介の意欲は感じるものの、ミステリーの結末を知りたい読者にとっては、やや冗長すぎるくだりです。

しかもこの部分ではハンス、グレーテル兄弟が登場しないため、しびれを切らした息子にとうとう「ハンスは?」と聞かれてしまいました。

というわけで、わが家ではオランダ紹介関係は少しだけ省略して先を読んでしまったのですが、オランダに興味を持つ方にはお薦めの本です。

その証拠に、「この本が出版されたしばらく後に、作者のアメリカ人女性メアリー・メイプス・ドッジが2人の息子を連れてオランダに旅行した際、息子の一人が本屋でオランダの生活が一番よくわかるように書いてある本について尋ねたところ、この本を紹介された」というエピソードがあるほどです。

正気を失ったお父さんを抱えているために「バカの家」と言われるあばら家で、極貧の生活を送りながら、まっすぐで誇り高いハンス。

貧しさのために彼をばかにする級友もいれば、裕福な家に育ち、人の痛みもよく理解して、なんとかハンスの誇りを傷つけないように彼を助けようとする級友も。

名医ではあるけれでも気難しいことでも有名なブックマン医師が、ハンスの思いに打たれてハンスのお父さんの手術をしてあげたことから、ブリンカー家もブックマン家も、劇的な変化を遂げていきます。

わくわくしながらオランダの知識も得られる銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語 (岩波少年文庫)、是非読んでみてくださいね。強くお薦めします!

コメント